2020年のオリンピック開催に向け、観光業界が盛り上がってきている。日本は経済成長戦略の一環として、「観光立国」を目指しており、2020年に4000万人、2030年に6000万人の外国人観光客を誘致する数値目標が立てられている。
一方で宿泊客の受け入れ態勢は未だ不十分とされ、各地でホテルの建設ラッシュとなっている。 また、ホテル以外の対応策として期待されているのが、個人間で部屋の貸し借りをする「民泊」だ。
民泊の大手予約サイトであるAirbnbで掲載されている物件数は年々倍増を繰り返し、今では28,395件に上る1。
当レポートでは、掲載されている物件の中で人気物件が持つ特徴を分析するため、アメニティやハウスルールといった物件の条件面の調査を行った。
1. 民泊に必要なアメニティ上位には生活必需品・設備が多くランクイン
当社調べ(n = 8576)
図表1 はAirbnbに掲載されている物件で提供されているアメニティの割合について、全体と売上が上位10%の物件に分けて比較したグラフだ。(当社調べ)
全体・上位ともに、日用品、シャンプー、キッチン、Wifi、エアコンといった生活必需品や設備の導入割合が高い傾向にある。また、子ども連れでの宿泊を許可している物件が90%を超えているなど一般的だ。
一方で、ペットの宿泊を許可している物件は全体・上位ともに10%を下回っている。また、自転車の貸し出しなど付加価値としてサービスを提供している物件についても、20%程度にとどまっており、まだ一般的とは言えない。
次に、全体・上位で割合が異なる項目についてみてみよう。
2. 安全性・ラグジュアリー感がある物件が人気
上図は、売上が上位の物件と全体のアメニティー割合を比較し、差異が大きいものから並べ直した表である。つまり、上から順に、全体とは差別化ができている人気物件の特徴といえる。
基本的に売上上位の物件と全体を比較して、アメニティーが充実していることを示す結果となった。
特に差が激しかったのは、ワイヤレスインターホンや煙・一酸化炭素検知器など安全面を意識した設備だ。ホテルや旅館と比べ、安全性の懸念がある民泊では、こういった安全性を高める工夫がゲストから人気があると考えられる。
また、Airbnbでは煙・一酸化炭素共用検知器の設置を推奨しており、ホストに無償配布するキャンペーンを実施したことがある。2 Airbnbでは、上記のようにゲストが安全に宿泊できる物件を上位に表示させるような試みがなされている可能性もある。
続いて上位と全体で差がついたのが、ジャグジー・高級風呂といったラグジュアリー設備である。世界ではバスタブを日常的に利用しない国も多いが、民泊を行う上では必要と考えていた方が良い。
また、風呂場やトイレといった水周りのグレードは、民泊サイトの評価の中でも特に大切とされる項目「清潔さ」を保つためにも重要といえるだろう。
次に、洗濯機やキッチンといった長期滞在ニーズを満たす設備も人気が高そうだ。こういった設備は通常のホテルにはないか、またはゲストが使用できないことが多いため、ホテルとの効果的な差別化となりうるのである。
最後に、民泊物件の特徴といえばセルフチェックインの存在だろう。通常のホテルでは、フロントのチェックインで鍵をもらい入室するのが一般的だ。しかし民泊では、物件までの行き方を記したアクセスガイドとキーボックスなどの手法を組み合わせて、ゲストと対面せずに物件まで案内することも多い。そのため24時間いつでもゲストが入室可能な「セルフチェックイン」も人気なのだと考えられる。
■レポートのまとめ
・95%以上の物件で、日用品、シャンプー、キッチン、Wifi、エアコンといった生活必需品・設備が提供されている。
・売上の上位10%の物件と全体を比較したところ、、ワイヤレスインターホンや煙・一酸化炭素検知器など安全面を配慮した設備、ジャグジーなどハイグレードな設備が人気であることを示している。
今後、民泊を始められる際の物件選びや、設備購入では、上記のような点に注意していただきたい。
当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、特定の商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は当社が信頼できると判断した各種データに基づき作成されておりますが、その正確性・確実性を保証するものではありません。本資料に掲載された内容は予告なしに変更される場合があります。
1. http://airlabo.jp/article/japan(2017年4月8日時点での全国の掲載物件数)
2. https://www.airbnb.jp/help/article/515/i-m-a-host–am-i-required-to-have-a-smoke-and-co-detector-installed
留田 紫雲 (とめだ しゅん)
民泊総合研究所 シニアフェロー
不動産ディベロッパーにて、外国人賃貸集客事業の責任者を経て、2015年11月に不動産×ITの事業展開する株式会社VSbiasを創業。テクノロジーの力で空間資産を解明・最大化させることをミッションとする。2016年7年 同社を株式会社メタップスに事業売却し、最年少子会社社長として事業を推進している。