不動産投資を行う際に、一番気になるのは不動産価格と利回りだろう。
不動産価格については、「銀行借り入れがどのくらいできるか」という個人(企業)の信用力の差が大きいため、一概には言えないが、「利回り」に関しては、誰もが気にすることだ。
「利回り」は、一般的には、
で計算するが、
で「表面利回り」として計算することもある。
投資家が求める「期待利回り」は、物件種別、築年数、場所(立地)などにより異なるが、投資する時期により、大きく異なる。
昨今のように、不動産投資熱が活況の場合は、不動産価格が上がり続けるが、それに比べて賃料はその上昇ペースは遅い(賃料の粘着性)。そのため、「利回り」は下がり基調になる。
この投資家の「期待利回り」は、キャップレートと呼ばれ、いくつかのシンクタンク等がデータを収集して、公表している。
図1は、(財)日本不動産研究所が公表している不動産投資家調査キャップレートの推移だ。
ワンルームタイプにおける東京23区CAPレートは、ミニバブル期は低下傾向が続きリーマンショック直前の2007年10月には5.2%となっていた。
しかし、リーマンショックの影響が出始めた2008年4月には6.3%と急反発した。その後2012年ごろから、低下傾向が続き2015年10月には4.7%とミニバブルの最低値を下回っていた。
しかし、その後は価格の高騰の限界からか、横ばいが続いている。ファミリーについても同様の動きをしている。
この間、賃料には大きな変化が見られなかったため、この変化は物件価格の上昇(下落)によるものと考えていいだろう。
価格上昇に伴い2015年の終わりごろから物件の動きに陰りが見え始めた。しかし、その後のマイナス金利政策、日銀による国債買い入れ策などがあり貸出金利が一段と下がった。
2017年の年初の現在では、利回りは横ばいからやや上昇という状況だ。「さすがに、今の都心物件は高いな」というのが不動産投資家の本音だろう。
そんな状況下で一般的な不動産投資家の視線は東京23区から、しだいに大阪や神戸、名古屋などに向いている。あるいは、首都圏の近郊、例えばTX沿線などに向いている。
しかし、民泊での利回りはこれよりも上回る可能性を秘めている。
民泊物件の利回りはどう考えるといいだろう。
となっている。
また、賃貸物件を借りて、それを民泊として利用する場合は、
として考えると、いいだろう。
場合によっては、100%を超えるなど、かなりの高利回りとなる。
今の民泊物件は、分譲マンションを民泊として貸し出しているものや賃貸用に建てられた物件を月極の賃貸とせずに民泊として貸し出しているものが多い。
これらには、エリアによっては合法か?という議論も多い。また、分譲マンションにおいては、マンション管理規約で制限している物件もある。
また空き家対策として、空き家を活用した民泊についての議論が盛んだが、まだあまり多くないようだ。
しかし、これからは法律が整備されると、初めから民泊として利用する前提での投資マンションが登場するだろう。1棟ものの物件はもちろん、区分所有という形もあるかもしれない。
このように、民泊投資は、一般的な賃貸物件では高利回りが期待できない現在においては、かなり期待のできる投資といえるだろう。(もちろん、許可の問題があることを忘れないでいただきたい)
執筆:不動産エコノミスト 吉崎誠二
民泊総合研究所 チーフエコノミスト
(社)住宅・不動産研究所 理事長
吉崎誠二(よしざきせいじ)
民泊総合研究所 チーフエコノミスト
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。
立教大学大学院 博士前期課程修了。㈱船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者 等を経て 現在 本職に加えて、 社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長を兼務。
不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。著書:「データで読み解く 賃貸住宅経営の極意」 (2016年2月) 「2020年 大激震の住宅不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを買える人」(青春新書)等10冊。多数の媒体に連載を持つ。
公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/